不動産取引での「契約不適合責任」
目次
- ○ 契約不適合責任とは?
- ・買主の請求権利4つ
- ○ 契約不適合責任期間と瑕疵担保責任の違い
- ・適用対象に関して
- ・行使期間制限に関して
- ○ 不動産取引の場合での買主が請求可能な権利4つの例
- ・①追完請求権
- ・代金減額請求権
- ・契約の解除
- ・損害賠償請求権
- ○ 契約不適合責任期間と時効について
- ○ ◆まとめ◆
契約不適合責任とは?
2020年4月の民法改正により「瑕疵担保責任」と呼ばれていたのが、「契約不適合責任」と名称が変更されました。
また、買主の権利が拡充され、契約不適合責任で追及される期間も変更されました。
売買契約において、品質不良・品物違い・数量不足・その他不備があった場合に売主が買主に対して負う責任を「契約不適合責任」といいます。
買主の請求権利4つ
①履行の追完請求権・・・売主側が修理や代替品納入をし、完全な状態にする責任
②代金減額請求権・・・売主側が補修等に応じない場合に、売買価格を減額する請求
③契約の解除・・・売主側が補修等に一切応じない場合、買主側は契約解除ができる
④損害賠償請求・・・買主側に損害が発生した場合の損害賠償責任
契約不適合責任期間と瑕疵担保責任の違い
※契約不適合があった場合の損害賠償責任や契約解除について、他の債務不履行(契約違反)と同じルールが適用されます。(民法第564条)
不動産取引での場合、瑕疵担保責任よりも売主側の責任が重くなっているので、売却前に売却する物件がどのようなものなのかをしっかり把握することが最も重要なポイントです!!
適用対象に関して
瑕疵担保責任の「瑕疵」とは、法的に欠陥があることを指します。
つまり、瑕疵担保責任では隠れた瑕疵があった場合、売主は買主に対して損害賠償や契約の解除を求められます。
契約不適合責任は、契約内容に適合しない場合、隠れた瑕疵であるかどうかにかかわらず売主が負う責任で、損害賠償や契約の解除以外に修補や代替品の引渡しによる追完請求や代金の減額を求められます。
行使期間制限に関して
行使期間に関しては、瑕疵担保責任では、瑕疵があることを知った時から1年以内に損害賠償や解除の請求をしなければならないとされていました。
契約不適合責任では、買主は不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知すれば責任を追及できることに変更されました。
不動産取引の場合での買主が請求可能な権利4つの例
①追完請求権
「追完請求権」は不動産の場合、「補修請求権」に該当しますので、欠陥箇所の修理を請求できる権利となります。
(例)契約時には雨漏りしていない旨で購入した中古物件で雨漏りが発生。
→追完請求権に基づき買主は雨漏りの修補を売主に請求した。
代金減額請求権
「追完請求」をしても、売主が修理をしない場合や、修補不能と認められた場合に「代金減額請求権」が請求できます。
(例)買主が雨漏りに対し、追完請求をしたが無視され債務が履行されなかった。
→代金減額請求を起こし、当初支払った購入代金から差額分を返金してもらった。
契約の解除
契約の解除には、買主が催告して契約を解除できる「催告解除権」と、買主が催告せずに契約を解除できる「無催告解除権」があります。
売主が「追完請求」に応じない場合、「代金減額請求権」以外に相当な期間を定めて催告できるのが「契約解除権」です。
※しかし、売主の債務不履行が軽微であるときは「契約の解除」はできないので注意。
(例)雨漏りに対し追完請求をしたが、半年以上にわたり無視され続けた。
→契約解除通知をし、購入代金全額を返金してもらい契約解除した。
損害賠償請求権
上記3つの権利とは別に求めることが出来ます。
(例)雨漏りによって家具や家電が腐敗・損傷したため、使用できなくなった。
→補填として売主へ「50万円」の損害賠償を求めました。
※損害賠償請求に関しての注意事項※
売主に「帰責性」が無い場合、買主は損害賠償請求を起こせません。
例えば、Aが所有していた不動産で雨漏りがあったが、Bは事実を知らずに購入し、Cへ転売した。Cが所有後、雨漏りしたので損害賠償請求をしたいが、Bは知らずに転売している為、CはBに損害賠償の請求はできない。
契約不適合責任期間と時効について
※契約不適合責任には民法上、行使期間が設けられています。
買主は消費者の場合には、不適合を知った時から1年以内に通知をすれば良いですが、会社間の売買等での場合には。商法第526条2項が適用されるため、「買主は商品の引渡しを受けてから6か月以内に欠陥や不具合を発見して通知すれば、買主は商品の欠陥や不具合について補償を受けることが出来る」ことを定められています。
◆まとめ◆
土地や建物などの不動産取引では高額なお金が動きます。
安心して取引が行えるように、売買契約書を取り交わします。
特に中古物件の場合は、契約後に欠陥などの不具合が見つかったりすると、トラブルに発展することも多くなりますので、契約前にきちんとした調査を行い、契約時にしっかりと売主と取り決めをしておくことが重要です。
土地や建物に関する欠陥や不具合はホームインスペクションを実施することで事前に把握することができます。